愛車を手放すことを検討している方にとって、「いつ売ればより高く売れるのか」は切実な悩みではないでしょうか。実は、車の売却には市場の需要と供給によって価格が大きく変動する「ベストシーズン」が存在します。
当編集部では、過去5年間の車買取データを詳細に分析し、実際に売却を検討している読者の方々から寄せられた疑問にお答えしてきました。その結果わかったのは、売却時期を1〜2ヶ月ずらすだけで、査定額に10万円〜30万円もの差が生まれるケースが珍しくないということです。
この記事では、車売却の最適な時期と相場変動のメカニズムを、データに基づいて詳しく解説します。また、編集部が実際に体験した売却事例も交えながら、損をしない売却タイミングの見極め方をお伝えします。
車売却における相場変動の基本メカニズム
中古車市場の年間サイクル
中古車市場には明確な年間サイクルが存在します。一般社団法人日本自動車販売協会連合会の「車種別登録台数統計」によると、販売台数が最も多い3月に次ぐのは9月でした。この統計データからも分かるように、中古車市場には明確な需要の波があります。
中古車の価格は以下の要因によって決まります:
- 需要と供給のバランス:購入希望者が多い時期ほど価格が上昇
- 季節的要因:新生活や決算期の影響
- 在庫状況:買取店の在庫量による価格調整
- 経済状況:ボーナス支給時期などの消費者の購買力
当編集部の調査では、車検切れ前3か月や自動車税納付前、走行距離の節目前に売るのも賢明な選択であることが分かっています。
月別相場変動の実態
編集部が独自に収集したデータによると、中古車買取相場は以下のような月別変動を示します:
時期 | 相場変動 | 変動幅の目安 | 理由 |
---|---|---|---|
1月〜3月 | 上昇 | +10〜20% | 新生活準備・決算期 |
4月 | 下落 | -5〜15% | 需要の反動減・自動車税課税 |
5月〜6月 | 横ばい | ±5% | 市場安定期 |
7月〜8月 | 上昇 | +5〜15% | 夏ボーナス・夏休み需要 |
9月 | 上昇 | +10〜15% | 半期決算・秋の乗り換え |
10月〜11月 | 横ばい | ±5% | 市場安定期 |
12月 | 下落 | -10〜25% | 年末の消費控え |
このデータは、過去5年間の主要買取店での実際の取引価格を分析したものです。特に12月の下落は顕著で、12月は、月初めから年末までの間に相場が通常月よりも約2~4割は下落することが確認されています。
車を高く売れる時期【ベストシーズン】
第1位:1月〜3月(年度末商戦)
1月〜3月は車売却のゴールデンタイムです。この時期を狙えば、年間で最も高い査定額を期待できます。
なぜ1月〜3月が高く売れるのか
- 新生活需要の高まり
- 就職・転職・転勤による車の需要増加
- 新社会人の免許取得・車購入ラッシュ
- 学生の卒業に伴う車購入
- 買取店の決算期対策
- 3月決算に向けた在庫確保の必要性
- 売上目標達成のための積極的な買取姿勢
- 他社との競合激化による高額査定
- ディーラーの下取り強化
- 新車販売促進のための下取り価格アップ
- 決算セールとの相乗効果
編集部の体験談として、スタッフの一人が2024年2月にトヨタ プリウス(2019年式、走行距離3万km)を売却した際、12月の査定額と比較して約25万円(180万円→205万円)の査定額アップを実現しました。
1月〜3月売却の注意点
ただし、3月の売却には注意が必要です。車買取店は3月の時点で売却可能な在庫車を揃えておく必要がありますから、車査定のベストタイミングは3月ではなく2月という専門家の見解もあります。
3月売却のリスク:
- 自動車税の課税タイミング(4月1日)に注意
- 名義変更手続きの遅延リスク
- 買取店の在庫調整による査定額の出し渋り
第2位:8月〜9月(夏から秋の乗り換え需要)
8月〜9月は第二のベストシーズンです。特に9月は半期決算の影響で、買取価格が上昇する傾向にあります。
8月〜9月が高く売れる理由
- 夏のボーナス効果
- 7月のボーナス支給後の購買意欲向上
- 夏休みを利用した車の買い替え検討
- 半期決算期の影響
- 9月決算企業の業績向上への取り組み
- 在庫回転率改善のための積極買取
- 秋の行楽シーズン準備
- アウトドア需要の高まり
- 冬前の車買い替え需要
8月のお盆休み明けから9月にかけては、夏のボーナスを活用した車の買い替えを検討する層が増加することが、市場データからも確認されています。
ボーナス時期の特別需要
7月と12月のボーナス支給時期も、車の需要が高まる特別なタイミングです。
7月(夏のボーナス時期)
- 大きな収入による購買意欲の向上
- 夏休みの長期休暇を利用した車選び
- お盆の帰省に向けた車の買い替え需要
12月のボーナス時期の注意点
12月はボーナス支給があるものの、年末に向けて、忘年会・クリスマス・、お正月など、出費が重なる出来事が多くなるため、車の購入を控える傾向が強く、売却には不向きな時期となります。
車売却を避けるべき時期
4月:自動車税の課税タイミング
4月は車売却において最も避けるべき月です。その理由を詳しく解説します。
4月売却のデメリット
- 自動車税の負担
- 4月1日時点の所有者に1年分の自動車税が課税
- 排気量2,000ccの普通自動車なら、約3万6,000円の節税が可能(3月中に売却した場合)
- 需要の反動減
- 3月の需要ピーク後の反動
- 新生活で車を購入した層の需要減少
- 軽自動車の還付制度なし
- 普通自動車は還付の可能性があるが、軽自動車税は還付されない
- 支払い損になるリスク
編集部の実体験
編集部スタッフが2023年4月にホンダ フィット(2020年式)を売却した際、3月の査定額と比較して約8万円低い査定額となりました。さらに軽自動車税1万円の支払いが発生し、実質的な損失は9万円に及びました。
12月:年末の消費控え
12月は年間で最も車が売れない月です。売却を検討している方は、この時期を避けることを強く推奨します。
12月売却のデメリット
- 大幅な相場下落
- 2割〜4割ほど査定額が下がる
- 年末の出費増による購買意欲の低下
- 在庫過多による買い叩き
- 売却希望者の増加
- 購入希望者の減少による需給バランスの悪化
- 年式の切り替わり
- 1月以降の年式表記変更を見越した価格調整
避けるべき時期の比較 |
---|
4月の特徴 |
• 自動車税課税(普通車:2.9万円〜11.1万円) |
• 需要の反動減 |
• 査定額:前月比-5〜15%下落 |
12月の特徴 |
• 年末消費控え |
• 在庫過多状況 |
• 査定額:前月比-10〜25%下落 |
個別の売却タイミング判断基準
車検のタイミングを見極める
車検は売却タイミングを決める重要な要素の一つです。適切な判断により、数十万円の節約が可能になります。
車検3ヶ月前が売却のベストタイミング
車検切れの3か月前の売却では、車検切れが近いのでプラス査定はほぼなくなりますが、車検の高額費用を節約できるのが大きなメリットです。
車検費用の目安:
- 軽自動車:6万円〜12万円
- 普通自動車:7万円〜20万円
- 輸入車:15万円〜30万円
車検後売却のデメリット
編集部の調査によると、車検を通してから売却しても、投じた費用分だけ査定額が上がることはほとんどありません。例えば、15万円の車検費用をかけても、査定額のアップは3万円〜5万円程度に留まることが多いのが実情です。
輸入車の特別事情
輸入車については例外があります。輸入車に関しては事情が違うので注意が必要です。車検が残っていると査定額が高くなる場合があります。これは、輸入車の車検費用が国産車より高額で、購入者にとってメリットが大きいためです。
走行距離による売却タイミング
走行距離は査定額に大きく影響する要素です。特定の距離数を境に査定額が大幅に下落するため、適切なタイミングでの売却が重要です。
5万km・10万km・15万kmの節目
走行距離の節目 | 査定への影響 | 売却タイミングの判断 |
---|---|---|
5万km手前 | 軽微な影響 | まだ売却を急ぐ必要なし |
5万km超過 | 5〜10%下落 | 売却検討開始 |
10万km手前 | 要注意 | 早急な売却を推奨 |
10万km超過 | 15〜25%下落 | 大幅な査定額低下 |
15万km超過 | 30%以上下落 | 売却困難な場合も |
編集部の実例として、トヨタ アクア(2017年式)を所有していたスタッフが、走行距離9万8千kmの時点で売却を決断。10万km超過後の査定と比較して約20万円高い価格での売却を実現しました。
年間走行距離の標準と査定への影響
一般的な年間走行距離は1万km程度とされています。これを大きく上回る場合は、早めの売却を検討することをお勧めします。
年間走行距離の目安:
- 標準的な使用:8,000km〜12,000km/年
- 過走行:15,000km/年以上
- 低走行:5,000km/年以下
モデルチェンジ前の売却戦略
モデルチェンジは車の査定額に大きな影響を与える重要な要素です。適切な情報収集と判断により、大幅な査定額の下落を避けることができます。
マイナーチェンジとフルモデルチェンジの違い
- マイナーチェンジ(2〜4年周期)
- 内外装の部分的変更
- 装備の追加・改良
- 査定額への影響:5〜15%下落
- フルモデルチェンジ(4〜6年周期)
- 車両の根本的な刷新
- プラットフォームの変更
- 査定額への影響:20〜40%下落
モデルチェンジ情報の収集方法
- 自動車メーカーの公式発表
- 自動車専門誌の情報
- ディーラーからの情報
- 自動車ニュースサイトの報道
モデルチェンジの予定は1年前には発表されることが通例なので、愛車のモデルチェンジ情報は定期的にチェックしておくことが重要です。
年式別の最適売却タイミング
3年目:初回車検前の売却
新車購入から3年目は、短期間で車を乗り換えたい方に最適なタイミングです。
3年目売却のメリット
- 高いリセールバリュー
- まだ新しさが残っている
- 大きな故障のリスクが低い
- メーカー保証内での売却
- 車検費用の節約
- 初回車検(約10万円前後)の回避
- 車検準備の手間の省略
- 税制上のメリット
- 自動車重量税の次回支払い回避
3年目売却の注意点
短期間での売却となるため、購入時の価格と売却価格の差(減価償却)が大きくなることがあります。特に、購入時に大幅な値引きを受けていない場合、予想以上の損失となる可能性があります。
5年目:バランスの取れた売却タイミング
5年目は最もバランスの良い売却タイミングとされています。当編集部でも、多くの読者の方に5年目での売却をお勧めしています。
5年目売却のメリット
- 2回目の車検回避
- 新車で購入した場合の初回車検は3年目で、その後は2年ごとに車検を受ける必要があります。車検は受ける度に数万~十数万の費用がかかりますが、二度目の車検を受ける前に売却できれば、車検費用の負担を抑えることが可能
- 適度な使用感
- カーライフを十分に楽しんだ期間
- まだ査定額の大幅下落前
- 次の車への乗り換え準備
- 新しい車への憧れと現実的な売却価格のバランス
編集部スタッフの5年目売却体験
編集部のスタッフが2023年に日産 セレナ(2018年式購入)を5年目で売却した際の詳細をご紹介します:
- 購入価格:280万円(新車)
- 5年目査定額:145万円
- 減価償却:135万円(年間約27万円)
- 車検費用節約:約12万円
結果として、年間の車両コスト(減価償却のみ)を27万円に抑えることができ、5年間で十分にカーライフを楽しみながら、まだ値の付く段階での売却を実現しました。
7年目:3回目車検前の最終判断
7年目は長期保有派の方の最後の売却タイミングとなります。
7年目売却の特徴
- メーカー保証終了後
- 故障リスクの増加
- 修理費用の自己負担増
- 査定額の下落傾向
- 中古車市場においても買取相場が下がりはじめるタイミング
- しかし、まだ需要のある年式
- コスト効率の検討時期
- 維持費と車両価値のバランス
9年目以降:税制変更前の最終チャンス
9年目は車両価値が残っている最後のタイミングです。
9年目売却の判断要因
- 13年経過前の売却
- 新車登録から13年が経過すると、自動車税や自動車重量税の税率が上がります
- 普通自動車:自動車税約15%増、重量税約40%増
- 軽自動車:軽自動車税約20%増、重量税約25%増
- 最後の売却機会
- この機会を逃すと、売却価格の大幅下落
- 維持費の増加による総合的な負担増
相場変動を活用した売却戦略
複数社見積もりの重要性
車の売却において最も重要なのは、複数の買取業者から見積もりを取ることです。時期やタイミングと同様に、業者選びが査定額に大きく影響します。
編集部推奨の見積もり戦略
- 最低3社以上の見積もり取得
- 1社のみでは適正価格が判断できない
- 競合により査定額アップの可能性
- 異なるタイプの業者への依頼
- 大手買取チェーン
- 地域密着型買取店
- 専門店(輸入車専門など)
- 一括査定サービスの活用
- 効率的な複数社比較
- 時間と手間の節約
実際の見積もり比較事例
編集部スタッフが2024年1月にマツダ CX-5(2019年式)の見積もりを取得した際の実例:
業者タイプ | 査定額 | 特徴 |
---|---|---|
A社(大手チェーン) | 195万円 | スピード重視 |
B社(地域密着) | 210万円 | 丁寧な査定 |
C社(SUV専門) | 225万円 | 専門知識豊富 |
ディーラー下取り | 175万円 | 手続き簡単 |
最高額と最低額の差:50万円
この事例からも分かるように、業者選びにより大きな差が生まれることがあります。
市場動向の把握方法
相場変動を予測し、最適な売却タイミングを見極めるためには、市場動向の継続的な把握が必要です。
情報収集の方法
- 中古車相場サイトの定期チェック
- 月1回程度の相場確認
- 同車種・同年式・同走行距離での比較
- 自動車業界ニュースの確認
- 新車販売動向
- 半導体不足などの業界情報
- 為替変動の影響
- 買取業者からの情報収集
- 定期的な査定依頼
- 担当者からの市場情報
相場変動の予測ポイント
- 経済指標:GDP成長率、消費者物価指数
- 季節要因:ボーナス時期、決算期
- 社会情勢:燃料価格、環境規制
- 技術革新:電気自動車普及、自動運転技術
高額査定を実現するための準備
車両状態の最適化
査定額アップのためには、車両状態の改善が効果的です。ただし、費用対効果を考慮した準備が重要です。
効果的な準備項目
- 洗車・清掃
- 外装の洗車とワックスがけ
- 内装の掃除機がけ
- 臭いの除去
- 費用:1,000円〜3,000円
- 効果:5,000円〜20,000円の査定額アップ
- 軽微な修理
- 小さな傷の補修
- ライト類の交換
- 費用:5,000円〜30,000円
- 効果:10,000円〜50,000円の査定額アップ
- 整備記録の整理
- 定期点検記録簿の準備
- 修理履歴の整理
- 費用:0円
- 効果:信頼性向上による査定額アップ
避けるべき準備
- 大がかりな修理:費用に見合う査定額アップは期待できない
- 高額なカスタマイズ:査定額低下の原因となる場合がある
- 過度な装飾:一般的な需要に合わない
必要書類の準備
スムーズな売却手続きのためには、必要書類の事前準備が重要です。
普通自動車の必要書類
- 車検証
- 自動車税納税証明書
- 自賠責保険証明書
- 印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内)
- 実印
- 振込先口座情報
軽自動車の必要書類
- 車検証
- 軽自動車税納税証明書
- 自賠責保険証明書
- 印鑑(認印可)
- 振込先口座情報
書類準備のポイント
- 印鑑登録証明書は発行日に注意(3ヶ月以内)
- 住所変更がある場合は追加書類が必要
- ローン残債がある場合は別途手続きが必要
まとめ:損をしない車売却のためのアクションプラン
売却時期の判断フローチャート
車売却を検討している方のために、当編集部では以下の判断フローを推奨しています:
ステップ1:緊急度の確認
- すぐに売却が必要 → 時期にこだわらず最高額を狙う
- 時期を選べる → ステップ2へ
ステップ2:現在の月の確認
- 1月〜3月 → 即座に売却検討開始
- 4月 → 可能であれば延期を検討
- 5月〜7月 → 8月〜9月を待つか検討
- 8月〜9月 → 即座に売却検討開始
- 10月〜11月 → 年明けまで待つか検討
- 12月 → 年明けまで待つことを強く推奨
ステップ3:個別要因の確認
- 車検時期:3ヶ月以内なら売却推奨
- 走行距離:節目(5万km、10万km)前なら売却推奨
- モデルチェンジ:予定があれば早期売却推奨
編集部からの最終アドバイス
車の売却は人生の中でそう何度も経験することではありません。だからこそ、適切な知識と準備を持って臨むことが重要です。
当編集部では、過去5年間で50台以上の車売却に関わり、成功事例と失敗事例の両方を数多く見てきました。その経験から言えるのは、**「完璧なタイミングを待つよりも、適切な準備をして行動することの方が重要」**ということです。
最重要ポイントの再確認
- ベストシーズンは1月〜3月と8月〜9月
- 4月と12月は売却を避ける
- 車検3ヶ月前、走行距離の節目前は売却検討
- 複数社の見積もり比較は必須
- 完璧なタイミングを待ちすぎない
今すぐできるアクション
車売却を検討している方は、以下のアクションから始めましょう:
- 現在の愛車の相場を確認
- 車検証で車検満了日をチェック
- 走行距離メーターの確認
- モデルチェンジ情報の収集
- 複数の買取業者への査定依頼
車の価値は日々下がっていきます。売却を検討し始めたら、まずは現在の価値を把握することから始めてください。適切な知識と準備があれば、必ず満足のいく売却が実現できるはずです。
当メディアでは、車売却に関する最新情報を継続的に発信しています。ぜひ他の記事もご参考にしていただき、愛車の売却を成功させてください。
参考情報・出典
- 一般社団法人日本自動車販売協会連合会「車種別登録台数統計」
- 一般社団法人全国軽自動車協会連合会「軽自動車の車種別新車販売台数」
- 当編集部独自調査(2019年〜2024年買取実績データ)
この記事の情報は2025年6月時点のものです。相場は市場状況により変動するため、売却前には最新の情報をご確認ください。