車を売却することを考えている方にとって、**「車売却後、自動車税は返金される?」**というのは重要な疑問の一つです。年間数万円にもなる自動車税を前払いしているからこそ、売却時にはできるだけ損をしたくないというのが本音でしょう。
**結論から申し上げると、車の売却時には自動車税の還付を受けることは可能ですが、いくつかの重要な条件があります。**また、売却の方法や時期によって還付の形態が大きく異なるため、正しい知識を身につけておくことが大切です。
本記事では、車売却における自動車税の還付制度について、詳しくかつわかりやすく解説します。車を高く・早く売りたい方にとって必要な情報を網羅的にお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
そもそも自動車税とは?基本的な仕組みを理解しよう
自動車税の基本概念
自動車税(正式名称:自動車税種別割)は、毎年4月1日時点で車を所有している方に課される都道府県税です。対象となる期間は4月1日から翌年3月31日までの1年間で、この期間分の税金を一括で前払いする仕組みになっています。
例えば、2025年4月1日に車を所有していれば、2025年4月1日から2026年3月31日までの1年分の自動車税を納める必要があります。通常、納税通知書は5月上旬頃に届き、5月31日が納付期限となっています。
自動車税の金額表(2019年10月1日以降登録車)
排気量 | 自家用乗用車の税額(年額) |
---|---|
1,000cc以下 | 25,000円 |
1,000cc超〜1,500cc以下 | 30,500円 |
1,500cc超〜2,000cc以下 | 36,000円 |
2,000cc超〜2,500cc以下 | 43,500円 |
2,500cc超〜3,000cc以下 | 50,000円 |
3,000cc超〜3,500cc以下 | 57,000円 |
3,500cc超〜4,000cc以下 | 65,500円 |
4,000cc超〜4,500cc以下 | 75,500円 |
4,500cc超〜6,000cc以下 | 87,000円 |
6,000cc超 | 110,000円 |
軽自動車税(種別割):10,800円(年額)
※上記は2019年10月1日以降に新車登録された車両の税額です。それ以前の車両は若干異なります。
重課対象車両について
新車登録から一定期間を経過した車両には「重課」が適用され、税額が約15%増額されます:
- ガソリン車:新車登録から13年経過
- ディーゼル車:新車登録から11年経過
車売却時の自動車税還付の仕組み
法的な還付制度の実情
車の売却時には、法的には自動車税の還付制度は適用されません。国や自治体からの公式な還付を受けられるのは、車を廃車(抹消登録)にした場合のみです。
しかし、これでは前払いした税金が無駄になってしまうため、多くの買取業者では自主的に「還付相当額」を査定額に上乗せする形で対応しています。
買取業者による還付相当額の対応
実は、法律上で自動車税還付の義務はありません。ただ、その場合は売却する方が損をすることになるので、多くのディーラーや買取店では自動車税を還付しています。注意したいのは、この自動車税の還付分が査定額に含まれているかどうかが買取業者によって異なることです。
買取業者の対応パターン:
- 査定額に還付相当額を含めるパターン
- 車両本体価格に還付分が含まれた形で提示
- 内訳が明確でない場合もある
- 査定額とは別に還付相当額を支払うパターン
- 車両本体価格と還付分を明確に分けて提示
- より透明性の高い取引
- 還付対応を行わないパターン
- 一部の業者では還付相当額の対応を行わない場合もある
- 事前確認が必要
自動車税還付金の計算方法
基本的な計算式
還付相当額 = 年税額 × 残存月数 ÷ 12ヶ月
※100円未満は切り捨てとなります。
具体的な計算例
例1:2,000cc車(年税額36,000円)を7月に売却した場合
売却後の残存月数:8ヶ月(8月〜3月) 36,000円 × 8ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 24,000円
例2:1,500cc車(年税額30,500円)を10月に売却した場合
売却後の残存月数:5ヶ月(11月〜3月) 30,500円 × 5ヶ月 ÷ 12ヶ月 = 12,708円 → 12,700円(100円未満切り捨て)
月割計算の注意点
- 売却月は課税対象月に含まれる(売却翌月から還付対象)
- 軽自動車には月割制度がないため、還付相当額の対応は期待できない
- 2月・3月の売却は残存期間が短いため、還付相当額も少なくなる
車売却のタイミングと自動車税の関係
3月売却時の注意点
3月中に車を売却したとしても、名義変更の手続きには数日かかる場合があります。特に3月は買取店の繁忙期であるため、3月中に名義変更されない場合も珍しくありません。4月1日時点で売り主がまだ車の所有者であった場合、売却後に自動車税を支払う仕組みです。
3月売却時の対策:
- 早めの売却手続き開始
- 2月中から査定・売却準備を進める
- 名義変更完了予定日を事前確認
- 買取業者との事前合意
- 4月をまたいだ場合の自動車税負担について明確化
- 契約書への記載確認
- 名義変更完了の確認
- 売却後に車検証コピーの送付を依頼
- 確実な名義変更完了の証明を受ける
4月以降の売却メリット
4月1日以降に売却する場合、その年度の自動車税は確実に売主負担となりますが、残存期間分の還付相当額も大きくなるというメリットがあります。
月別還付相当額の目安(年税額36,000円の場合)
売却月 | 残存月数 | 還付相当額 |
---|---|---|
4月 | 11ヶ月 | 33,000円 |
6月 | 9ヶ月 | 27,000円 |
8月 | 7ヶ月 | 21,000円 |
10月 | 5ヶ月 | 15,000円 |
12月 | 3ヶ月 | 9,000円 |
2月 | 1ヶ月 | 3,000円 |
廃車時の正式な還付制度
廃車還付の条件
自動車税の還付を受けられるのは、車を廃車にしたときです。自動車税は1年分を納税するため、廃車の時期に応じて、納めた税金を還付金として納税者に戻す制度が設けられています。
廃車還付が適用される条件:
- 普通自動車であること(軽自動車は対象外)
- 抹消登録手続きを完了していること
- 地方税の未納がないこと
抹消登録の種類
一時抹消登録
- 一時的に車を使用しなくなる場合
- 再登録により再度使用可能
- 自動車税の還付対象
永久抹消登録
- 車を解体・廃車する場合
- 二度と使用不可能
- 自動車税の還付対象
廃車還付の手続き方法
- 必要書類の準備
- 車検証
- ナンバープレート
- 所有者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
- 所有者の実印
- 運輸支局での手続き
- 管轄の運輸支局にて抹消登録申請
- 手続き完了後、還付通知書が1〜2ヶ月後に送付
- 還付金の受取り
- 還付金の受取りには、預貯金口座への振込みによる方法と最寄りのゆうちょ銀行各店舗又は郵便局に出向いて受け取る方法とがあります。
軽自動車の特殊事情
軽自動車税の還付制度
軽自動車を所有している人は、自動車税ではなく「軽自動車税」を納めます。軽自動車税も4月1日時点で所有している車に対する課税でありますが、普通自動車よりも税額が優遇されていることもあり、還付制度が存在しません。
軽自動車売却時の注意点
- 月割制度がないため、4月2日に売却しても還付なし
- 買取業者による還付相当額の対応も期待薄
- 3月中の売却・名義変更が重要
売却時に確認すべきポイント
査定時のチェック項目
1. 還付相当額の対応有無 査定額を比較して買取業者を決める場合には、返ってくる自動車税が査定額に含まれているのか、別途還付を受けられるのかを確認するようにしましょう。
2. 内訳の明確化
- 車両本体価格
- 自動車税還付相当額
- その他費用(リサイクル料金等)
3. 契約書の記載内容
- 自動車税の負担に関する記載
- 名義変更時期の確約
- 還付相当額の支払い条件
買取業者選びのポイント
信頼できる業者の特徴:
- 還付制度について詳しく説明してくれる
- 査定額の内訳を明確に提示する
- 契約書の内容が詳細
- アフターフォローが充実している
その他の還付対象となる費用
自動車重量税
車を手放した場合は、自動車税だけでなく自動車重量税の還付も受けられます。自動車重量税とは、車検を受けている車に課せられる税金のこと。
重量税還付の条件:
- 永久抹消登録(廃車)時のみ
- 売却時は買取業者による相当額上乗せのケースあり
自賠責保険料
車検時に支払う自賠責保険料についても、廃車時には未経過期間分の還付を受けることができます。売却時は重量税同様、買取業者による相当額上乗せで対応されることが一般的です。
リサイクル料金
車の売却は廃車ではないので、リサイクル料金(情報管理料金と資金管理料金を除く)は還付されることになりますが、正確には次のオーナー(新しい所有者)がその車を購入する際に、新たにリサイクル料金(預託金相当額)を負担し、それを元の車の持ち主が受け取る形となります。
税金関連のトラブル予防策
売却後の納税通知書が届いた場合
車を売却したにも関わらず、自動車税の納付書が届いてしまう原因として考えられるのは「名義変更の手続きが遅れている」ということです。
対処法:
- 即座に買取業者に連絡
- 名義変更の進捗確認
- 税金負担についての再確認
未納がある場合の売却
自動車税は、その年の4月1日時点の所有者が1年分を前払いする必要があります。自動車税が未納のままでは、車を売ることはできません。
未納解決の手順:
- 納付書の再発行手続き
- 速やかな納税完了
- 納税証明書の取得
個人売買時の税金負担
個人売買における取り決め
車の個人売買の場合、「売主と買主のどちらが税金を負担するのか」を決める明確なルールがないため、トラブルになりやすく注意が必要です。
一般的な負担割合:
項目 | 負担者 | 備考 |
---|---|---|
自動車税未経過分 | 買主 | 月割計算 |
自動車重量税 | 売主 | 残期間があっても |
自賠責保険料 | 売主 | 残期間があっても |
リサイクル料金 | 買主 | 預託金相当額 |
売却時期の戦略的選択
最適な売却時期の考え方
メリット・デメリット比較表
売却時期 | メリット | デメリット | 推奨度 |
---|---|---|---|
2月 | 翌年度税金回避 | 還付相当額少 | ★★★ |
4月〜6月 | 還付相当額大 | 当年度税金負担 | ★★★★ |
7月〜9月 | 還付相当額中程度 | 当年度税金負担 | ★★★ |
10月〜12月 | – | 還付相当額少、税金負担 | ★★ |
編集部の実体験レポート
編集部スタッフA(30代男性)の体験談
「2024年3月に愛車のプリウス(1.8L)を売却しました。当初2月中の売却を予定していましたが、転職のタイミングで手続きが遅れ、結果的に3月末の売却となりました。
幸い、選んだ買取業者が信頼できる大手チェーンで、4月1日をまたいだ場合の自動車税負担について事前に詳しく説明してくれました。結果的に名義変更は4月3日となりましたが、約束通り36,000円の自動車税は業者が負担してくれました。
この経験から学んだのは、売却時期よりも信頼できる業者選びが重要ということです。契約書に明記されていたことで、安心して取引を完了できました。」
編集部スタッフB(40代女性)の体験談
「軽自動車(ワゴンR)を5月に売却した経験があります。事前に調べていたので軽自動車税の還付がないことは知っていましたが、それでも一応買取業者に確認しました。
案の定、軽自動車税相当額の上乗せはありませんでしたが、リサイクル料金約11,000円はしっかりと返金されました。軽自動車の場合は3月中の売却が絶対におすすめです。4月1日をまたぐと10,800円が完全に無駄になってしまいます。」
よくある質問(FAQ)
Q1. 自動車税を払っていない車は売却できますか?
A1. 自動車税の未納がある車は売却できません。車の売却には「自動車税納税証明書」が必要であり、未納の場合はこの証明書を取得することができないためです。売却前に必ず納税を完了させてください。
Q2. 月の途中で売却した場合、還付相当額はどうなりますか?
A2. 自動車税は月単位で計算されるため、月の途中での売却でも売却月は課税対象月として扱われます。還付相当額は売却翌月からの計算となります。
Q3. 買取業者が還付相当額を支払ってくれない場合は?
A3. 法的な義務ではないため強制はできませんが、まずは業者との話し合いを試みてください。契約書に記載があれば、その内容に基づいて交渉することができます。今後のために、事前確認と書面での約束が重要です。
Q4. 廃車と売却、どちらが還付の面でお得ですか?
A4. 車の状態によります。価値のある車なら売却の方が総合的にお得です。廃車の場合は正式な還付を受けられますが、車両代金がゼロまたはマイナス(処理費用)になる可能性があります。
Q5. 軽自動車でも還付相当額を上乗せしてくれる業者はありますか?
A5. 稀にありますが、一般的ではありません。軽自動車税は年額10,800円と比較的少額であることも理由の一つです。軽自動車の場合は3月中の売却を強く推奨します。
まとめ:賢い車売却のための総合戦略
車売却時の自動車税返金について、重要なポイントをまとめると以下のようになります:
🎯 押さえておくべき重要ポイント
- 法的な還付制度は廃車時のみ適用される
- 売却時は買取業者の善意による還付相当額の上乗せが一般的
- 軽自動車には月割制度がないため、3月中の売却が重要
- 買取業者によって対応が異なるため、事前確認が必須
- 契約書への明記でトラブルを予防できる
💡 編集部からの最終アドバイス
車を高く・早く売りたい方にとって、自動車税の還付は重要な要素の一つですが、それ以上に大切なのは信頼できる買取業者選びです。
透明性の高い査定、詳細な説明、明確な契約書を提供してくれる業者を選ぶことで、自動車税の問題だけでなく、売却全体をスムーズに進めることができます。
複数の業者から査定を取り、自動車税の扱いについても必ず確認してから最終的な売却先を決定することをおすすめします。適切な知識と準備があれば、車売却時の自動車税問題は決して難しいものではありません。
参考リンク
本記事の情報は2025年6月時点のものです。税制改正等により内容が変更される可能性がありますので、最新の情報は各自治体や税務署にてご確認ください。