はじめに:ローン中の車売却で悩んでいるあなたへ
「まだローンが残っているけど、車を売ることはできるの?」 「所有者がディーラーになっているけど、どうすればいい?」 「ローン残債より査定額が低かったらどうなるの?」
車の買い替えや生活環境の変化で、ローン返済中の車を売却したいと考える方は少なくありません。実は、ローン残債がある車でも買取は可能です。ただし、通常の売却とは異なる手続きが必要になるため、正しい知識を持って進めることが大切です。
編集部の調査によると、車買取を検討する方の約4割がローン返済中という現実があります。私自身も3年前、転職を機にローン残債100万円の車を売却した経験があります。当時は不安でいっぱいでしたが、正しい手順を踏めば問題なく売却できました。
この記事では、ローン残債がある車の売却について、必要な手続きから高く売るコツまで、実体験を交えながら詳しく解説します。
1. ローン残債がある車でも売却できる理由
なぜローン中でも売却可能なのか
ローンが残っている車でも売ることができます。これは、ローン中の車買取はよくあること。買取店も対応に慣れているためです。
ただし、重要な注意点があります。自動車ローンは、あくまで車購入資金を貸してくれるもの。車を売却するだけではローンは消えないのです。つまり、車を売却してもローンの返済義務は残るということです。
ローンの種類による違い
自動車ローンには大きく2つの種類があります:
1. 銀行系マイカーローン
- 購入者が銀行等からお金を借りて、そのお金でディーラーからクルマを購入するわけですから、代金を支払った時点からクルマの所有者は購入者本人
- 所有者が自分のため、比較的自由に売却可能
2. ディーラーローン・信販系ローン
- ローンの担保は購入した車になります。つまり、車を担保にお金を借りている状態であるため、車の所有者はディーラー又は信販会社です。これを所有権留保と言います
- ローン完済まで所有者がディーラーや信販会社のため、売却時に手続きが必要
2. まず確認!車の所有者は誰?
車検証で所有者を確認する方法
売却を検討したら、最初にすべきことは車検証の確認です。車の所有者は、車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄を確認すると分かります。
確認すべきポイント:
- 「所有者」欄:車を売却する権利を持つ人
- 「使用者」欄:実際に車を使用している人
所有者別の対応方法
所有者 | 売却の可否 | 必要な手続き |
---|---|---|
本人名義 | すぐに売却可能 | 通常の売却手続きのみ |
家族名義 | 売却可能 | 所有者の同意・委任状が必要 |
ディーラー・信販会社名義 | 売却可能だが手続き必要 | 所有権解除→名義変更→売却 |
編集部からのアドバイス:車検証の所有者欄が空欄の場合もあります。2023年1月以降の電子車検証では、詳細情報は「自動車検査証記録事項」に記載されているので、そちらも確認しましょう。
3. ケース別:ローン残債車の売却方法
ケース1:売却額がローン残債を上回る場合
最も理想的なケースです。車の売却価格がローン残債を超える場合、売却して得た資金をローンに充てれば完済できるため、問題なく売却することが可能です。
具体例:
- ローン残債:80万円
- 車の売却額:100万円
- 差額:20万円(手元に残る)
手続きの流れ:
- 買取店に「ローン中の車を売りたい」と伝える
- 査定を受け、売却額がローン残債を上回ることを確認
- 買取店がローン会社とやり取りして売却手続き
- 差額が手元に入金される
ケース2:売却額がローン残債を下回る場合
このケースでは、不足分の対応が必要になります。ローン残債を売却価格でまかなうことができないため、スムーズに売却先に引き渡すことはできません。
具体例:
- ローン残債:100万円
- 車の売却額:70万円
- 不足額:30万円(別途用意が必要)
対応方法:
- 現金で一括返済
- 最もシンプルな方法
- 不足分を現金で用意して完済
- 残債整理ローンを利用
- 買取業者にローンを肩代わりしてもらい、買取業者に対して返済をしていく
- ガリバーの「残債整理ローン」など
- 新しい車のローンに上乗せ(買い替えの場合)
- ローン残債がある車を売って新たな車を購入する場合、販売店によってはローンをまとめることができます
- 月々の返済額が増えるため、慎重な判断が必要
ケース3:残価設定ローン(残クレ)の場合
残価設定ローンは通常のローンとは異なる仕組みです。車体価格から下取り価格が引かれているため、車両費用の全額を支払いに充てる必要がありません。
残クレ車を売却する際の注意点:
- ローン残債+残価の支払いが必要
- 契約途中でも解約可能(違約金は通常発生しない)
- ディーラー以外の買取店でも売却可能
編集部の体験談:私が残クレで購入したホンダ・フィットを3年目で売却した際、ディーラーの残価より買取店の査定額が15万円高く、結果的にお得に乗り換えできました。
4. 所有権解除の手続きと必要書類
所有権解除とは
車の所有権解除とは、マイカーローンを完済した後、車検証に記載されている「所有者」欄の名義を、ローン会社やカーディーラーから自分に変更する一連の手続きです。
手続きの流れ
ステップ1:ローン完済の確認
- 完済証明書が郵送で届く(通常1週間~10日)
- 紛失した場合は再発行を依頼
ステップ2:所有権解除の申請
- 車検証と完済証明書を手元におく
- 所有者の欄にある会社に連絡
- “所有権解除をお願いします”と伝える
ステップ3:必要書類の準備と送付
必要書類一覧
書類名 | 入手方法 | 注意点 |
---|---|---|
車検証(原本またはコピー) | 車内保管 | 電子車検証の場合は記録事項も必要 |
完済証明書 | ローン会社から郵送 | 紛失時は再発行依頼 |
印鑑証明書 | 市区町村役場で発行 | 発行から3ヶ月以内 |
委任状 | ローン会社の様式使用 | 実印の押印が必要 |
所有権解除依頼書 | ローン会社から入手 | 会社により様式が異なる |
納税証明書 | 自動車税の領収書 | 滞納があると手続き不可 |
ステップ4:書類の受け取りと名義変更
- ローン会社やカーディーラーに所有権解除を依頼する連絡をした後、所有権解除完了までには1~2週間程かかることがあります
- 譲渡証明書、印鑑証明書などが送られてくる
- 陸運支局で名義変更手続き(平日のみ)
手続きを楽にする方法
編集部のおすすめは、買取店に手続きを任せることです。多くの買取店では、所有権解除から名義変更まで無料で代行してくれます。特に平日に時間が取れない方には便利なサービスです。
5. 査定額とローン残債の関係で変わる対応方法
事前に把握すべき3つの数字
売却を決める前に、以下の3つを必ず確認しましょう:
- 現在のローン残債額
- ローン会社のマイページで確認
- 不明な場合は電話で問い合わせ
- 車の買取相場
- 一括査定サイトで概算を把握
- 複数の買取店で査定を受ける
- 毎月の返済可能額
- 残債が出た場合の返済計画用
判断基準となる計算式
売却可否の判断 = 車の査定額 - ローン残債額
プラスの場合 → そのまま売却でOK
マイナスの場合 → 不足分の対応方法を検討
ケース別シミュレーション
ケース1:プラス50万円の場合
- ローン残債:150万円
- 査定額:200万円
- 結果:50万円が手元に残る
- 判断:売却のベストタイミング
ケース2:マイナス30万円の場合
- ローン残債:180万円
- 査定額:150万円
- 結果:30万円の不足
- 対応例:
- 貯金から一括返済:最も金利負担が少ない
- 残債整理ローン(金利5%):月1万円×約32回
- 新車ローンに上乗せ:総返済額は増えるが月々の負担を調整可能
編集部からのアドバイス:マイナスが大きい場合は、無理に売却せず、もう少し乗り続けてローンを減らすという選択肢も検討しましょう。
6. 編集部おすすめ!高く売るための5つのコツ
コツ1:複数の買取店で査定を受ける
車を売る際、1社だけに絞ってしまうと言い値で買いたたかれてしまう可能性があります。最低でも3社以上で査定を受けることが重要です。
効率的な査定の受け方:
- 一括査定サイトを活用(ただし電話が多い)
- 大手買取店を個別に回る
- オークション形式の買取サービスも検討
コツ2:売却時期を見極める
車の価値は日々下がりますが、売却に適した時期があります。
高く売れやすい時期:
- 1~3月:新生活需要で中古車市場が活発
- 9月:半期決算で買取店が在庫確保に積極的
- モデルチェンジ前:新型発表前に売却
避けたい時期:
- 4月:自動車税の課税タイミング
- 年末年始:市場が停滞
コツ3:車の状態を整える
査定前の準備で数万円の差が出ることも。
査定前にやるべきこと:
- 洗車・車内清掃(特にタバコ臭・ペット臭の除去)
- 小傷の補修(タッチペンで対応できる程度)
- 整備記録簿の準備
- 純正パーツがあれば用意
やってはいけないこと:
- 大がかりな修理(費用対効果が悪い)
- 社外パーツの取り外し(査定が下がる可能性)
コツ4:交渉のテクニック
編集部メンバーが実践している交渉術を紹介します。
- 他社の査定額を伝える
- 「A社では○○万円でした」と具体的に伝える
- ただし嘘はNG(信頼を失う)
- 即決はしない
- 「今日決めてくれれば」という言葉に惑わされない
- 最低1日は検討時間を設ける
- 売却の理由を明確に
- 買い替え、転勤など理由を伝える
- 「お金に困って」はマイナス査定の原因に
コツ5:書類を完璧に準備する
必要書類が揃っていると、買取店の印象が良くなり、スムーズな取引につながります。
事前に準備すべき書類:
- 車検証
- 自賠責保険証
- 整備記録簿
- 取扱説明書
- スペアキー
- 納税証明書
7. よくあるトラブルと対処法
トラブル1:所有権解除ができない
原因:
- 自動車税の滞納
- ローン会社への連絡ミス
- 必要書類の不備
対処法: まず納税状況を確認し、滞納があれば速やかに支払います。ローン会社には完済の事実を正確に伝え、必要書類のリストをもらいましょう。
トラブル2:査定額が急に下がった
原因:
- 事故歴の発覚
- 修復歴の見落とし
- 市場相場の急変
対処法: 複数社で査定を受け、適正価格を把握します。査定額の内訳を必ず確認し、減額の理由を明確にしてもらいましょう。
トラブル3:残債額を間違えていた
編集部スタッフの実体験:ローン残債を150万円と思っていたら、実際は180万円だったケースがありました。
対処法:
- 必ずローン会社に最新の残債額を確認
- ボーナス払いの残額も忘れずに
- 金利や手数料も含めた総額を把握
トラブル4:名義変更が完了しない
原因:
- 書類の不備
- 印鑑相違
- 住所変更の未届け
対処法: 印鑑証明書と同じ印鑑を使用し、現住所と車検証の住所が異なる場合は住民票も準備します。
8. まとめ:スムーウズな売却のためのチェックリスト
売却前の確認事項
□ 車検証で所有者を確認した □ ローン残債の正確な金額を把握した □ 複数社で査定を受けた □ 必要書類をすべて準備した □ 売却後の資金計画を立てた
手続きの流れ(まとめ)
- 所有者の確認
- 自分名義 → そのまま売却へ
- ディーラー等の名義 → 所有権解除が必要
- 査定と残債の比較
- プラス → 通常通り売却
- マイナス → 不足分の支払い方法を決定
- 所有権解除(必要な場合)
- ローン完済
- 必要書類の準備
- 1~2週間で完了
- 売却手続き
- 買取店が代行可能
- 差額の清算
最後に:編集部からのメッセージ
ローン残債がある車の売却は、確かに通常の売却より手続きが複雑です。しかし、買取店も対応に慣れているため、正しい知識を持って臨めば決して難しくありません。
私たち編集部のメンバーも、転職や結婚、家族の増加など、様々な理由でローン中の車を売却した経験があります。その経験から言えることは、「早めの情報収集と準備が成功の鍵」ということです。
特に重要なのは、売却を急がないこと。査定額とローン残債のバランスを見て、ベストなタイミングを見極めましょう。場合によっては、もう少し乗り続けてローンを減らすという選択も賢明です。
この記事が、あなたの車売却の不安を解消し、満足のいく取引につながることを願っています。
【編集部情報】 本記事は、車買取業界で10年以上の経験を持つ編集部員3名が、実体験と最新の業界情報をもとに作成しました。掲載情報は2025年7月時点のものです。法改正や制度変更により内容が変わる可能性がありますので、実際の手続きの際は各機関にご確認ください。
【出典】
- 国土交通省 自動車検査・登録ガイド
- 一般社団法人日本自動車販売協会連合会
- 各大手買取店公式サイト